悪魔のいけにえ
レザーフェイス一家の逆襲

監督:ジョン・ラッセンホップ

脚本:キルステン・エルムス、アダム・マーカス
デブラ・サリヴァン

出演:アレクサンドラ・ダダリオ、ダンイェーガー
スコット・イーストウッド、タニア・レイモンド

ストーリー

 「テキサス・チェーンソー大虐殺」の衝撃的な惨劇から1時間後、狂気に満ちたソーヤー一家は村人たちにより惨殺される。20年後、ヘザー・ミラーの元に一通の手紙が届く。手紙にはテキサスの財産を相続するよう書いてあった。ヘザーは出生の秘密が隠されたテキサスの館へと向かう決意をする。友人たちとヘザーは、そこが地獄の入口とは知らずにパーティーを始めるが、そこにはあのレザーフェイスが…。新たな「テキサス・チェーンソー大虐殺」が幕を開けた!

レビュー

 「悪魔のいけにえ」シリーズは、1作目の続編兼リメイクが無数に存在していて一向に話が進まないシリーズである。トビー・フーパー繋がりで言えば「悪魔のいけにえ2」が正史という扱いになるのだろうが、あの映画は意図的にコメディ要素を強くした、1作目のセルフパロディであった。その映画を無かったことにして作られたジェフ・バーの「悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲」は、冒頭のテロップでこそ1作目のチェーンソー事件について触れてはいるものの、ソーヤー家の構成が大幅に変わっていたり、話の展開がほとんど1作目の焼き直しだったりするので、実質上のリメイクだったりする。「悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス」は、1作目の脚本に参加したキム・ヘンケルが監督を務めており、脚本家繋がりで言えばこれが1作目の正式な続編ともいえるが、やはり一家の家族構成のリニューアルやオリジナルを意識したショットが連発しているので、実はこれもまたセルフリメイクなのである。マイケル・ベイ製作「テキサス・チェーンソー」は現代風のスタイリッシュな演出が満載のリメイクだし、前日譚「テキサス・チェーンソービギニング」も、前作では見られなかったオリジナル版の名場面を積極的に取り入れたという意味では元祖のリブート作品といっても過言では無いだろう。

 そして、2013年。“「悪魔のいけにえ」の正統なる続編!”という今までの続編全てを勝手に黒歴史にしたコピーを掲げて彗星の如く現れたのが本作である。3D映画ということもあって、劇場公開時のタイトルは「飛び出す 悪魔のいけにえ」となっており、これは恐らくニンテンドー3DSの人気タイトルである「とびだせ どうぶつの森」にリスペクトを捧げたものだと推測される(絶対違う)。物語は1作目のラスト直後から始まるという気合いの入りっぷりであるが、ソーヤー家の住処を町長率いる自警団が押し掛け、中にいる家族もろとも蜂の巣にして火炎ビンで炎上させてしまうという「それをやったらオシマイだろ」的な掟破りの反則技が冒頭でいきなり展開される。ちなみに本作の脚本には「13日の金曜日 ジェイソンの命日」でジェイソンを特殊部隊の迫撃砲で木っ端微塵に粉砕して全世界のホラー映画ファンを敵に回したアダム・マーカス監督が関わっており、相変わらず誰も求めちゃいない展開を平然とやってのけるKYっぷりに感心させられる。

 その後は一気に20年後へと話が進み、前半はテキサスにノコノコやって来たバカな若者を、ひっそりと生き延びていたレザーフェイスが自慢のチェーンソーを唸らせながら追いかけ回すマンネリ展開が待っているのだが、ヒロインが自分がソーヤー家の生き残りであるという衝撃の事実を知ってしまってからは、映画のテイストが180度変わる。これまでの作品では感情移入不可能のパワー系キチガイとしか描かれていなかったレザーフェイスがまるで被害者のような扱いとなり、逆にソーヤ家の根絶やしに固執する町長の醜さが強調される。クライマックス、警官である町長の息子の罠に掛かりヒロインは捕らえられてしまうが、そこにレザーフェイスがヒーローさながらに登場して20年前に殺された家族の仇討ちを敢行する熱い展開などは、一体これが「悪魔のいけにえ」なのか「仮面ライダーV3」なのかも分からなくなってしまう。自分の彼氏や友人が皆殺しにされたことなど水に流し、ヒロインとレザーフェイスがひとつ屋根の下で仲良く暮らしていくという観客の倫理観が大いに揺さぶられるラストシーンは、もはや別ジャンルとも言うべき妙な感動を生み出しており、過去のどの続編にも無い、独特の余韻を残すことに成功している。

 

空気の読めない脚本家によって蜂の巣にされるソーヤー家!

 

ヘザーとレザーフェイスは、ずっと仲良く暮らしましたとさ

 

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