ゾンビ・インフェクション

監督:アレックス・ウェスリー

脚本:アレックス・ウェスリー

出演:テッド・ヴァーノン、クラウディオ・フラガッソ、
アンドレアス・シュナース、フランコ・ギャロファロ

ストーリー

 軍人ヴァーノンは長き任務の末、故郷であるロシアの小さな村へと帰還する。しかし、そこでは米軍による細菌兵器「デス・スリー」の実験が行われていた…。住民はグロテスクなゾンビへと姿を変え、村は地獄と化した。血と臓物が舞い散る中、ヴァーノンは家族を守るべく武器を手に立ち上がった。

レビュー

 「オラフ・イッテンバッハ読本」や「ジャーマン・ゴア クロニクル ドイツ残酷ホラー30年史」の著者であるヒロシニコフ氏は、偶然にも住んでいる場所が同じ市内ということもあり、奇妙な縁で何度かバーでご一緒させて頂いているが、彼を一言で説明すると残酷ホラーに取り憑かれた狂人である。どれくらい狂人なのかというと、日本未公開低予算ホラーの残酷シーンだけをぶったぎって強引に繋げたDVDを自作してニコニコしながら渡してくる程度には狂人のだが、そんなヒロシニコフ氏が独自に立ち上げたレーベルが「VIDEO VIOLENCE RELEASING」である。これがまた、一体どこでこんな珍作を拾ってきたんだと言いたくなる映画ばかりリリースしており、本作も往年のJVDのディープレッドレーベルを思い起こさせる、何ともチープで汚ならしい、しかしゴアに対する愛情だけは確実に存在している世にも珍しいロシア産のゾンビ映画である。

 監督のアレックス・ウェスリーなる人物が何者であるかは存じ上げないが、彼が熱狂的なゾンビ映画フリークであることは間違いない。本作におけるゾンビ発生の原因となった化学兵器の名前はデス・スリなのだが、これは「サンゲリア2」で使われた細菌兵器デス・ワンのオマージュであることは明白。じゃあデス・ツーは一体何処にあるんだというツッコミはともかくとして、特筆すべきなのは出演者の面々である。まず、主演は「ヘル・ゴースト 悪魔のスケアクロウ」のテッド・ヴァーノン。ゾンビになる村人役に「サバイバル・オブ・ザ・デッド」のアンドレアス・シュナース監督、軍人役に「ゾンビ4」のクラウディオ・フラガッソ監督、更にはヘル・オブ・ザ・リビングデッド」のサントロ役だったフランコ・ギャロファロまでもがデス・スリーの開発者として登場し、一体どこにそんなコネクションがあったのかは不明だが、あまりにニッチすぎるゾンビ映画の関係者をこれだけ揃えてきたのは偉業と言っても良いだろう。

 ところが、この映画は先に挙げたどの作品にも似ていない。ウェスリー監督自身は案山子ゾンビvs強盗団の戦いを描いた「ヘル・ゴースト 悪魔のスケアクロウ」の大ファンらしいが、主演俳優が出ていることと劇中に案山子がほんの一瞬だけ登場すること以外に「ヘル・ゴースト 悪魔のスケアクロウ」らしさは特に無い。デス・スリーが田舎の川にばら蒔かれ、水を飲んだ村人がウンコをしようとしたら内臓も一緒に出てしまったりゲロを吐こうとしたら内臓も一緒に出てしまったりといったアバンギャルドなゴアシーンが矢継ぎ早に描かれるものの、そこにシュナース映画のような得体の知れない勢いがあるわけでもなく、原色以外をモノクロ調にしたフィルムや妙に辛気臭いBGMの効果もあって、やたらとダウナーな気持ちにさせてくれる。

 ストーリー構成も滅茶苦茶であり、主人公の正体が判明するどんでん返しが終盤で訪れるが、本当に唐突なので驚くというよりは呆気に取られるし、そこで明らかにオチが付いているのにも関わらず、撮影した映像を全部使いきってやろうという根性なのか、ゾンビ化した村人の姿を例のダウナー系テンションで写した映像が淡々と流れていき、まるで着地点を見失って遭難した気球を眺めてるような気分にさせられる。それ以外にも、場面によって画質がコロコロ変わる、ヒロシニコフ氏が悪ノリして意訳で字幕を入れてる箇所が存在しているといったトラッシュ要素が目白押しで、初めてミート・マーケット」「ゾンビ・オブ・ザ・デッド」を観たあの時の怒りとも感動ともとれぬ何とも形容しがたい複雑な感情を久々に思い出してしまった。とにかく、今後の「VIDEO VIOLENCE RELEASING」からは絶対に目が離せないとだけ言っておこう。ありきたりなホラー映画に満足出来なくなった人は、今すぐこのサイトをブックマークして次なる珍作に備えよ!

 

独特の映像センスにより、何とも不思議な感覚を抱かせる作品

 

ヒロシニコフ氏の意訳と思われるトンデモ字幕

 

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