富江

監督:及川中

脚本:及川中

出演: 中村麻美、洞口依子、田口トモロヲ、
水橋研二、管野美穂

ストーリー

 泉沢月子は、3年前の交通事故が原因で記憶障害と不眠症に悩まされていた。精神科の細野は、「トミエ」という名前を聞き出す。その細野のもとに、ある高校で起きた未解決事件を追っている刑事がやってくる。それは、ひとりの女子生徒が失踪したと同時に男子生徒や先生が自殺したり精神がおかしくなったというものだった。しかも、未解決事件の中には、それと同じような事件が何度も起こっているという…。

レビュー

 イトジュンの代表作である「富江」シリーズの映画化第1弾である。といっても、原作の最初のエピソードを映像化したわけではなく、ベースとなっているのは写真好きの女子高生・泉沢月子が主人公を務める「写真」編である。ところが、本作の月子は大学生という設定で、元となった「写真」のエピソードは主に回想シーンとして描かれる。3年前に起こった事件のショックで記憶を失った月子に再び富江の魔の手が迫る…というオリジナルの内容なのだが、そんな訳の判らないことをせずに、素直に「写真」「接吻」「屋敷」の月子3部作を映像化すれば良かったのではないのかと思ってしまう。

 案の定、本作の出来は散々なものである。意図的なのかもしれないが、物語はガーリー映画としての趣が強く、ホラー映画らしい演出は皆無といっても良い。女医、刑事などの登場人物が意味深に登場するが、本筋に全く絡まずにそれぞれが好き勝手なことを発言して気付いたら物語からフェードアウト。救いとなっているのは、富江役の管野美穂が「エコエコアザラク」ばりのブチ切れ芝居を披露していることだが、彼女が演じる富江は、原作の富江像とはかなりイメージが掛け離れている。3年前に月子に苛められた復讐の為、男達を操って月子の友人を殺害し、彼女を徐々に追い詰めていく手口も何だか根暗で富江らしくない。その後に月子を拉致し、ゴキブリを手にとって無理矢理食べさせようと笑い狂う姿は圧巻だが、下品な感じでやっぱり富江らしくない。まぁモノホンのゴキブリを掴んでゲラゲラ笑える管野美穂は大した女優ではあると思うが。

 ところがラストの展開は割と印象的。月子の彼氏によって首を切断された富江が再生を果たし、湖畔で月子と富江の直接対決になるわけだが、そこで富江が一言、「貴方は私、私は貴方なのよ…」全く以って意味が判らない月子は「バイバイ、富江」と発煙筒で富江を焼き殺し勝利を収める。全てが終わった後、月子は鏡を覗きこみ、富江と同じ右目の下の位置にほくろがあるのを発見して唖然としていると、後ろからヌッと現れた富江が鏡に映って終了。実は自分も富江だったという無茶苦茶な結末だが、鏡にヌッと笑顔で映りこむ富江の演出が本当に絶妙。鬼のような形相をして現れるわけでもなく、ましてやホラー映画らしいジャジャーン!といった効果音も一切無し。無音で、満面の笑みでヌッと現れるから怖いのだ。「終わり良ければ全て良し」という便利な言葉があるように、不満点は多々あるが個人的には嫌いになれない映画なのである。

 

 

      ビニール袋を見つめてニヤニヤする男…          中から覗くのは怪しい瞳。これが“富江”だ!

 

 「バイバイ、富江!」 かつての友人が富江を葬るが…             実は自分も富江だった…?

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