室岡 弥生@
あんな大きな地震を体感したのは、一体いつ以来だったのだろう。室岡弥生は、断続的に続いた余震のせいか乗り物酔いにも似た目眩を感じつつも、しとしとと降りしきる静かな小雨の中で立ち尽くしていた。 「東北地方の被害が甚大のようです」 後ろにいた男が弥生に声を掛ける。弥生のことを黄泉川大学の跡地まで車で運んでくれた男であった。 「しかし室岡さん、どうしてまたここに戻ってきたんです?」 「ここが震源地だからよ」 男が困惑しているのが分かった。それもそうだろう。気象庁によれば、震源は宮城県沖だと発表されているからだ。しかし、組織の末端にいるこの男は何も分かっていない。私たちが所属している組織の人間は日本はおろか世界中のあらゆる場所に存在しており、情報操作など簡単に出来るほど強大な力を持っているということを。 「すみません、何度も連絡したんですが、地震のせいか携帯電話が繋がらなくて」 弥生たちの元に到着した現場監督の男が息を切らしながら言うと、“それ”が入った透明のビニール袋を弥生の目の前に掲げた。 「揺れの直後、あの女が見つかった所と全く同じ場所にコイツが現れました。伝染病とかの危険性がありそうだったんで、とりあえず事務所にあったビニール袋に入れたんですが」 弥生は現場監督の男に礼を告げると、嬉しさのあまり震えを抑えきれない手で“それ”の入った袋を受け取る。まさか、こんなにも早くお宝にありつけるとは思ってもいなかった。やはり、弥生の読みは当たっていたのだ。 「榊和美さん、あなたからの贈り物、有効に活用させてもらうわね」 今も地獄で戦い続けている彼女に対し、弥生は感謝の意を込めて呟いた。
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||