案山子

監督:鶴田法男

脚本:村上修、玉城悟、鶴田法男、三宅隆太

出演:野波麻帆、柴崎コウ、
グレース・イップ、松岡俊介

ストーリー

 恋人のように慕っていた兄・剛と連絡が取れなくなって数日、彼のアパートで高校時代の同級生・泉からの手紙を見つけたかおるは、妙な胸騒ぎを覚えて泉の実家のある不来彼方村へ向かった。だが、泉の母・幸恵は泉が療養所に入院して不在だとけんもほろろの対応。かおるは、泉の父・耕造の計らいで家に泊めて貰うことになるも、その晩、泉と案山子が現れる奇妙な夢にうなされてしまう。実は、不来彼方村には案山子に死者の魂を憑依させ蘇らせるという風習があり、幸恵もまた既に死んでいた泉を祭りの晩に蘇らせようとしていたのである。その事実を耕造に聞かされたかおるは、合同会所に幽閉されていた剛を助け出し村から逃げようとするが、その時、かおるに対し嫉妬と憎悪を抱いていた泉が蘇ってしまう。

レビュー

 原作は20ページ程の短編。墓場に案山子(かかし)を立てておくと、埋葬された人間と同じ顔になるという不気味な話であったが、それを90分に拡大して映画にするのはどう考えても無理がある。監督も無理があるということに気付いたのか、別の短編「墓標の町」を持ってきて話を融合させてみた。脚本家が4人もいるところを見ると、ストーリーを決めるのにかなり苦戦したみたいだが、出来上がった映画を観る限りでは4人もいてコレかよという感想は拭えない。だが、随所で見られる80年代ホラーな雰囲気が、イトジュンの原作とは全然関係の無いところで作用していて、本作を意外な佳作に仕上げている。

 原作を完全無視して、案山子がゾンビのように襲い掛かってくる展開は単純に面白いし、その案山子の顔が「ハロウィン」のマイケルのように無表情なのも不気味で良い。単調なリズムが静かに繰り返されるBGMといい、完全に鶴田監督はジョン・カーペンター映画を模倣しているのだろう。それをJホラーという全く別の器に載せるのはどう考えても無理があるが、とりあえずカーペンターに対する熱い想いだけは伝わる。

 ブラザーコンプレックスのヒロイン・かおる(野波麻帆)と失踪中の兄の剛(松岡俊介)、その恋人である泉(柴咲コウ)の三角関係を軸にして描かれる愛憎劇は見ている途中でかなりダレてくるものの、途中で登場する「かおるが憎い」の文字が大量に書かれた泉の日記は、割とベタな演出だが背筋が凍るような恐怖を感じさせた。そんな怨念を持った泉が案山子となって復活したからには、さぞかし凄い暴走を見せてくるのだろうと期待していたら、あっさりと剛に発煙筒で焼かれてしまうのだから実に拍子抜けである。これはきっと、最後の敵が爆薬1発で呆気なく爆死する「遊星からの物体X」へのオマージュに違いない。

 

 

       村に伝わる奇妙な風習。それは…        案山子に死者の魂を宿らせるもの。案山子オブザデッド!

  

   無表情で襲ってくる案山子達は不気味で良い感じ      柴崎コウバージョンの案山子。デザインが秀逸。

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