ザ・クレイジーズ

監督:ジョージ・A・ロメロ

脚本:ジョージ・A・ロメロ

出演:ウィル・マクミラン、ハロルド・W・ジョーンズ、
リン・ローリー、リチャード・フランス

ストーリー

 平和な田舎町に軍の細菌兵器を積んだ輸送機が墜落。感染した者は発狂し、必ず死に至る恐怖のウイルストリクシー≠ェ町中に漏洩した。軍は町を封鎖し、住民を隔離する手段に出た。消防隊のディビッドは妻のジュディ、同僚のクランク、道中で出会ったアーティとその娘のキャシーらと共に、町からの決死の脱出を試みる。

 軍の追跡を逃れ、とある一軒家で一休みする一同。しかし、アーティが娘のキャシーをレイプし、その翌日に自殺。娘のキャシーは兵士の前にフラフラと現れ射殺。ディビッドも兵士との戦いに敗れ、無残にも射殺される。 ディビッドとジュディは郊外へと逃亡するが、軍の強制的な鎮圧により暴徒化した市民が、ジュディを射殺する。放心状態のディビッドもまた、感染者とみなされ兵士達の手により隔離される運命にあった。

 何とか町の封鎖に成功した大佐のもとに連絡が入る。「別の地区で感染者が出た。君が指揮をとれ」 

レビュー

 ジョージ・A・ロメロが手掛けた細菌パニック。「処刑軍団ザップ」にインスパイアされて撮ったらしいが、キチガイ集団の狂気を極めて直接的かつハイテンションに描いたザップと違い、本作のテンションはとにかく暗く、重い。ロメロらしいドキュメンタリータッチの演出も効果大で、まるで自分がこの町の住民であるかのような、リアルな錯覚に陥ってしまう。いきなり軍隊に踏み込まれ、隔離を強制される住民達。この“死ぬほどヤバイ状況なんだけど、当の本人達は状況を理解していない”といった混乱の描写は「ゾンビ」冒頭の、プエルトリコ人アパート襲撃に匹敵する、リアリティ溢れる名シーンだ。

 本作の魅力は徹底した予定調和崩しにあると思う。劇中、ヒロインが逃亡する際に医者からコッソリと抗生物質を貰うシーンがある。「あーこれが後々の伏線になるんだなー」と思って見ていたら数分後、ヒロインは軍隊に捕まり、抗生物質はアッサリと没収されてしまう。他にも、ワクチンを研究中の博士が、ウイルス撲滅の手掛かりを発見した途端に階段から転げ落ちて死ぬという、最高にイジワルな展開も用意されている。思わず「現実は甘くないんじゃヴォケ!」というロメロ御大の説教が聞こえてきそうだ。

 この映画最大の疑問は一体誰が感染していたのか?という点に尽きるだろう。“感染したら狂う”という投げやりな症状のウイルスなのだが、劇中に登場するのは銃を振り回しながら常時テンパってる消防隊員実の娘を犯す親父ウイルスにやられたのか、緊張状態で頭がイカれたのか、それとも天然なのか。まるで判断の付かないような連中ばかりなのである。 これじゃあ感染者が誰なのかサッパリ分かりませんよ、というのも恐らく全てロメロの計算なのだろう。もしかしたら、誰も感染なんかしていなかったのかもしれない。スタッフロールに流れる優しい旋律の歌が、落ち込んだ気分を更に沈めてくれる。とにかく鬱になりたい時には最適の映画。

 

 

果たして彼らは感染者なのか?

 

「処刑軍団ザップ」でも発狂してたリン・ローリー

 

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