君はゾンビに恋してる
監督：友松直之
脚本：友松直之、貝原クリス亮、石川二郎
出演：羽田あい、小林優斗、
福天、野ノ宮なな
ストーリー
ヒトミはイケメンには全く目もくれない、超ゾンビ・マニアの女子高生。物心ついた時からゾンビに夢中で、古今東西の映画はもちろん、膨大なゾンビ・コレクションを誇る彼女は、「ゾンビの彼氏を作る」という究極の夢を持っていた。そんなある日、“ゾンビ君”というアダナを持つ冴えない童貞高校生・将太と出会う。ヒトミは将太を本物のゾンビにすべく、独自にゾンビ・パウダーの研究を進め、その粉で将太を本物のゾンビにしようと画策する…。果たして、ヒトミの念願叶い将太はゾンビになれるのか？！
レビュー
羽田あい演じるヒロインは大のゾンビ好き。ケータイの待受画面は「サンゲリア」のミミズゾンビだし、部屋にはゾンビ関連の著書やフィギュアが大量に置かれている。別に聞かれてもいないのにサビーニとデ・ロッシのゾンビメイクがどうだのクラシックゾンビとモダンゾンビがこうだのとクラスメイトに語り出してドン引きされるトンデモ過ぎるＪＫであるが、そんな彼女はある日、「ゾンビ君」という酷すぎる渾名を持つイジメられっ子の男子に興味を持って彼に急接近する。勉強だけが取り柄のゾンビ君の力を借りて本物のゾンビパウダーを生成し、それを使用してゾンビ君をガチのゾンビにしてしまうというのが物語の始まりだ。
念願のゾンビ彼氏を手に入れたヒロインと徐々に腐っていくゾンビ君とのエロ・グロでコミカルな日常は見ていて楽しいし、次第に町の人気者になりメディアにまで進出するようになったゾンビ君に対してヒロインのゾンビ君に対する情熱が急激に冷めていく辺りの描写の上手さは手痛い失恋を経験した友松監督ならではだろう。ゾンビ君の人肉喰いがバレた途端、マスコミや町の住民が急に手の平返しをしてくる展開も風刺が効いていて面白く、某難聴作曲家や某リケジョの騒動を見て真っ先にこの映画を思い浮かべてしまった人は恐らく日本中で１０人くらいは居たんじゃないかと思う。
そして、終盤に現れるホッケー部キャプテンであるジェイソン山田の登場により物語は更にカオスな方向へ。常にホッケーマスクを被る巨体のジェイソン山田は明らかな不審者であるが、ゾンビ映画に飽きて「１３日の金曜日」シリーズに浮気中だったヒロインはジェイソン山田の姿を見て思わず一目惚れ、何とあっさり乗り換えてしまう。しかし、ジェイソン山田は見た目だけでなく中身も立派なサイコ野郎だったようで、激しいセックスを終えてシャワーを浴びるヒロインを斧で惨殺してバラバラにしてしまう。全くワケが分からない展開であるが、日頃から「性犯罪者の多くはスポーツマン」と豪語している友松監督の体育会系男に対する異常なまでの敵対心というか嫉妬心を具現化させたキャラがジェイソン山田なのだろう、多分。
ジェイソン山田に殺されて山に遺棄されたヒロインは、偶然ゾンビパウダーを浴びたことでゾンビとして復活。同じく山で不貞腐れていたゾンビ君とも再会を果たし、「私、バラバラだから正常位しながらアナル舐めが出来るね！」というバカみたいな会話をした後に２人で協力してジェイソン山田に復讐を果たす。最後は２人仲良く朝日を浴びながらジェイソン山田の死体を貪り食ってジ・エンド。物語としては上手く纏まっているが、「低予算だけど何か文句ある？」と開き直っているかの如くチープなゴア描写や、「売りはおっぱいです！」と言わんばかりの長すぎる濡れ場などによって普通の映画ファンはおろか、ゾンビ映画マニアにすらも勧め難い作品となっている。
