ハロウィン6 最後の戦い
監督:ジョー・チャッベル
脚本:ダニエル・ファランズ
出演:ドナルド・プレザンス、ポール・ラッド、 マライア・オブライエン、ブラッドフォード・イングリッシュ
ストーリー
ブギーマンことマイケルが死んだと思われてから5年。ハドンフィールドはやっとハロウィンを祝えるようになった。しかし、新たな恐怖は始まっていた。肉親殺害に駆り立てるイバラの呪いにより、マイケルは蘇り、ハドンフィールドに戻ってきた。マイケルを執拗に追うルーミス医師と、かつてマイケルの最初の殺人を目撃したトミーも、惨劇を阻止するためにマイケルに立ちふさがるのだった。
レビュー
「ハロウィン4」「ハロウィン5」で、ローリーの娘であるジェイミーを主人公にした物語が展開されてきたが、今回がその完結編ともいえる内容。前作のラストで何者かに連れ去られたジェイミーは、謎の邪教集団に6年間も監禁されており、おまけに誰の子か分からない赤ん坊までいるという序盤からブッ飛んだ設定。更に凄いことに、赤ん坊を連れて施設から脱走したジェイミーは呆気なくブギーマンに捕まり、無惨にも殺されてしまうのだ。人が景気よく死ぬのが売りのスラッシャー映画でこんなことを言うのは野暮というものだが、一体、この娘の人生とは何だったのかと深く考えさせられてしまう。幼くして両親を交通事故で泣くし、学校ではマイケルの甥という理由でイジメられ、ブギーマンには執拗に命を狙われるわ、味方と思っていたルーミスには囮に使われるわと、これまで散々な仕打ちを受けてきたのに、何でこんな最期を遂げなくてはならないのか。これでは死んでいったローリーも報われないが、そのローリーすらも「ハロウィンH20」で「ジェイミーなんて娘は知りませんよ」みたいな顔で復活しているのだから困ったものである。
そんな不遇のヒロイン・ジェイミーが命懸けで守った赤ん坊を保護したのはトミーという青年で、何と彼は「ハロウィン」でローリーがベビーシッターを担当していた少年。そんなトミー君は独学でブギーマンの研究をしており、隣に住んでるローリーを養子にしたストロード家の親戚一家を監視している。赤ん坊の奪還を目指す邪教集団を率いるのはウィンという男で、彼は「ハロウィン」でちょろっとだけ登場した精神病院の院長。そして勿論、ブギーマンを追うルーミス医師も登場する。思わず「誰だよ!」と言いたくなるような人物も含めて1作目の関係者を無駄に多く登場させたのは良いが、登場人物が全然整理されていない上に、5作目で派手に広げた大風呂敷を畳むのは相当に無理があったようで、とにかく話がシッチャカメッチャカ。ストロード家の少年は「家族を殺せ」という幻聴に悩まされ、彼が次期ブギーマンであるかのような演出が何度か繰り返されるが、マイヤーズの血筋ではない彼が何故そんなことになっているのか特に説明はない。邪教集団も結局何がしたかったのか分からないまま全員ブギーマンに皆殺しにされるし、そもそもジェイミーの出産した赤ん坊の父親が一体誰なのかという疑問も解決されない。 ルーミス演じるドナルド・プレザンスはこの頃から心不全を患っていたせいか、眉間にシワを寄せて棒立ちしているだけのキャラに成り下がり、この期に及んでシリーズの継続を狙ったのか、ブギーマンの逃走という消化不良な結末にも疑問が残る。
ちなみに本作は「プロデューサーズ・カット版」なる別バージョンが存在しており、何とこのバージョンではジェイミーの辿る運命が大きく違う。また、彼女の生んだ赤ん坊の父親が明らかになったり、オリジナル版では存在意義が不明だった邪教集団の目的もはっきりと描かれる。オリジナル版のクライマックスがブギーマンとの攻防に終始していたのに対し、このバージョンでは邪教集団との戦いをメインとした全く別の展開になり、マイケルの逃走という結末そのものに大きな変化はないが、そこから更にルーミスのその後の運命を暗示させるカットがプラスされ、映画全体の印象が大きく変わるものとなっている。1本のお話としても実は「プロデューサーズ・カット版」の方が遥かに上手くまとまっており、「ハロウィン6」を初めて鑑賞する人には全力でそちらをオススメしたいところではあるのだが、JVDが発売したブルーレイは現在では入手困難となっており、鑑賞すること自体が難しくなっているのがあまりにも残念でならない。 |