悪魔の沼

監督:トビー・フーパー

脚本:トビー・フーパー、アルヴィン・L・ファスト、キム・ヘンケル

出演:ネヴィル・ブランド、メル・フェラー、
ロバート・イングランド、スチュアート・ホイットマン、
マリリン・バーンズ

ストーリー

 テキサス州のある田舎町。そこにある売春宿に身を寄せていた家出娘:クララは、常連客のチンピラ男:バックに乱暴なプレイを要求されたが、それを拒否したところ、そこを追い出されしまう。行く宛てのない彼女は、町はずれにある古びたホテル:スターライト・ホテルで宿を取ることにした。そんな彼女を迎え入れたのは、ホテルの主人:ジャッドだった。最初はやさしい彼であったが、彼女が売春宿からやって来た女だと知ると態度が豹変し、欲望むき出しに彼女を襲い始めた。異常に興奮したジャッドは、手にした鋤でクララをめった刺しにしてしまう。我に返った彼は、瀕死の彼女をホテルの敷地内にある沼に投げ込むのだった。そこには、人間をまる呑みできる程の大きいワニを数匹飼っていた。

レビュー

 「悪魔のいけにえ」が反響を呼び、即座にハリウッドへと招かれたトビー・フーパーが気合い十分で撮ったテキサスの実録キチガイホラーの第2弾。脚本にキム・ヘンケル、主演にマリリン・バーンズと、「悪魔のいけにえ」と同様のメンバーが揃っているのにも関わらず、ハリウッドが期待するほどの成果を上げられなかったのは、決してフーパーの気合いが空回りしたわけではなく、テキサス州に生息するキチガイの生態を前作以上に克明に描いた結果、もはや誰にも理解出来ない世界に突入してしまったからであろう。

 フーパーの描く殺人鬼は残虐非道で他人の命など屁とも思ってないような外道ばかりであるが、何故かフーパーは時折彼らの人間味溢れる一面を描き出す。レザーフェイスが親父や兄貴の叱責におどおどしたり、人をぶっ殺した後に「ヤベー!どうしようどうしよう…」とテンパりだすシーンがその筆頭であるが、本作品はその「ヤベー!どうしようどうしよう…」を90分延々見せられる映画と言っても過言ではない。観客にショックを与えることを目的としたスラッシャー映画には本来不必要ともいえる描写であるが、恐らくフーパーは狂人と常人の境界を敢えて曖昧にさせ、誰もが殺人鬼になりえるということを我々に伝えたかったのかもしれない。しかし、そのメッセージが誰にも理解されなかったのか、本作は世間的には失敗作の烙印を押され、フーパーの手を離れた「悪魔のいけにえ3」からのレザーフェイスも人間味の感じられない冷酷無比な殺戮マシーンと化してしまったのは何とも残念な話である。

 ストーリーは、ボロ宿を経営するオッサンがベトナム戦争の後遺症からなのか抑えきれない殺戮衝動を宿泊客で解消させ、「ヤベー!どうしようどうしよう…」とテンパりながらペットのクロコダイルに死体を食わせて証拠隠滅成功というくだりを何度も何度も繰り返す構成となっており、はっきり言って話はあって無いようなものだ。加害者はれっきとしたキチガイだが、被害者側の人間も変態プレイが大好きなロバート・イングランドや、どう考えても映画の中で1番病んでるウィリアム・フィンレイといったサイコパス揃いであり、まともに感情移入が許されるのは冒頭で殺された娼婦を探しにきた家族と軒下にひたすら隠れている幼女ぐらいなものである。ハリボテ感溢れるワニ君の造形や、明らかに赤すぎる夕焼けの演出、フーパー作曲の不快極まりない効果音などが映画を更に歪なものにしており、「悪魔のいけにえ」同様、何だか見てはいけないヤバイ映像を見ているような気分にさせてくれる、実にアンモラルな作品である。

 

ハリボテのワニ君が宿泊客を食い散らかす!

 

アルジェント映画ばりに不自然な照明。赤すぎ!

 

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