パルス
-回路-

監督:ジム・ソンゼロ

脚本:ウェス・クレイヴン、レイ・ライト

出演:クリステン・ベル、イアン・サマーハルダー、
クリスティナ・ミリアン、ジョナサン・タッカー

ストーリー

 学生ハッカー、ジョシュはハッキングにより“あるモノたち”をこの世に呼び出してしまった。そしてその存在を知ってしまったジョシュは、自らの命を絶った。彼の死後、恋人のマティと友人のイジーたちは彼の死に疑念を抱き真相を追った。その手掛かりは、残されたパソコンに、そしてインターネットの中にあったのだ。核心に近づく彼女たちの前で超常的な現象が起き始める。やがて人々が気付き始めた時には既に、人々が消え、街は廃墟となり始めていた。 

レビュー

 黒沢清「回路」のハリウッドリメイク。脚本に「エルム街の悪夢」のウェス・クレイヴンも参加している。ジャパニーズホラーのハリウッドリメイクは成功例が多く、「THE JUON 呪怨」はショッカー演出に磨きがかかっていたし、逆に「ダーク・ウォーター」はホラーテイストを抑えて人間ドラマを丁寧に描いていた。だが、いくらハリウッド映画がネタ切れとはいえ、「回路」にまで手を出してしまったのは完全に失敗であった。

 そもそもこの話は、自分と他人を繋げるコミュニケーションツールのインターネットが何故か霊界に繋がってしまい、幽霊がネットを介して現世へと雪崩れ込むあの世とこの世の逆転を描いた終末映画なのだが、随所に“人間は生きていても死んでいても孤独である”という黒沢流哲学が展開され、何度観ても味わい深いスルメのような作品だった。だが、本作はその黒沢流哲学を「回路」という物語からスパッと取り去ってしまった結果、ただの凡庸な終末映画になってしまっている。貯水タンクから女性がワンカットで投身自殺するシーンや飛行機が炎を噴きながら墜落していくシーンは、CG技術が未熟だった2001年の邦画でやったからこそショッキングなのであって、それと全く同じことを2006年の洋画でやられても何の衝撃も無い。

 また、ハリウッド映画らしいといえばらしいのだが、幽霊という存在に対策法や弱点を設定してしまっているのも愚の骨頂である。携帯電話の電波に乗ってやってくる幽霊に対して、「圏外なら平気だ!」と車で電波の届かない場所に逃げ込むシーンはかなり失笑。ラストもかなりポジティブシンキングな終わり方で実にアメリカンライクだ。ただ、黒沢流哲学が邪魔をしてイマイチ全体像が掴みづらかった「回路」という映画のストーリーを、手っ取り早く理解するには打ってつけの素材なのかもしれない。オリジナル版よりも登場人物が整理されているしテンポだって良いので、アクの強いオリジナル版に拒否反応が出た人は逆に楽しめる、ということになるのかも。

 

ワンカット投身自殺。当然、オリジナル版ほどの衝撃は無い

 

 

幽霊は圏外に弱いことが判明!

 

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