LOFT
ロフト

監督:黒沢清

脚本:黒沢清

出演:中谷美紀、豊川悦司、西島秀俊、
安達裕実、鈴木砂羽

ストーリー

 スランプに陥り、執筆に専念するため担当編集者が用意した東京郊外の空家に住むことになった作家・春名礼子。森と沼と草原に囲まれて、ひっそりとたたずむその洋館の向かいには、大学の研究所だという不気味な建物があった。ある日、そこに出入りする男を見かけた礼子は、廃墟のようなその建物に魅入られたように近付いていく。そこにいたのは考古学教授の吉岡誠。彼は、千年前に沼に落ち、沼の成分でミイラ化した女性をそこで極秘に保存していたのだ。それ以来、礼子の周りでは不思議な現象が多発し始める…。

レビュー 

 黒沢清のホラー映画を観賞するのに黒沢清になる必要は無いが、ある程度の覚悟は必要である。いきなり何を言っているんだ、と思うかもしれないが、この人の作るホラー映画はとにかく変な映画ばかりだということだ。例えば「回路」はネットを介して幽霊が襲ってくる話だったが、それだけでは終わらず最終的には世界が崩壊するディザスタームービーのような作品だった。“もう1人の自分を見たら死ぬ”という有名な逸話を題材にした「ドッペルゲンガー」は、序盤こそ正統派ホラーの空気を醸し出していたが途中からロードムービーになり、終盤はスラップスティックコメディになる。「リング」みたいな怖い映画が観たい、なんて不順な動機で黒沢映画を観るような人は、大抵痛い目を見ることになるであろう。

 本作も例によってジャンル分け不能な不思議映画だ。スランプに陥り口から泥を吐く症状に悩まされる女流作家の中谷美紀が郊外の洋館へと引っ越すが、そこの隣人の豊川悦司は千年前に死んだ女性のミイラと共に暮らすミイラフェチの男だった。物語は、この2人の奇妙な交友関係をメインに描かれるが、そこにミイラの存在とは全然関係の無い殺人事件が絡んできて、その事件の犠牲者である安達祐実が怨霊となって襲ってくる。ってかこの話ミイラいらなくね?と思っていたら、終盤でミイラが勝手に動き出してトヨエツを襲ったりするのでもう無茶苦茶である。ミイラに襲われたトヨエツも無茶苦茶で「動けるんだったら最初から自分で動け!」とミイラの襟首掴んで説教をかます。最後は沼の前で中谷美紀とトヨエツが唐突に永遠の愛を誓って抱き合うが、実は安達祐実を殺したのはトヨエツだった、という理解不能のオチが付き、トヨエツが「うわぁ〜っ」と沼に落下してドリフのような終わり方を迎える。思わず口を開けたまま固まってしまったが、この“俺は一体何を観ていたんだろう感”こそが黒沢清映画の醍醐味である。

 結局、黒沢清のホラー映画を理解するには黒沢清になるしかないのかもしれないが、森と草原に囲まれた洋館のゴシック的な美しさや、部屋の中にいたのかと思えば窓の外にペタッと張り付く幽霊の神出鬼没な登場、ヒロインが悲鳴を上げた後にガタッと物音がする(普通は逆)というホラー映画の概念を壊すかのような斬新な演出方法など、見るべき点は多い。考えるよりも感じる系の映画であるが、とにかく変なホラー映画を観たい、という人にはオススメ。

 

神出鬼没な幽霊を演じるのは安達裕実

 

 

襲ってきたミイラの襟首を掴んで説教するトヨエツ

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送