回路 

監督:黒沢清

脚本:黒沢清

出演:加藤晴彦、麻生久美子、小雪、
哀川翔、風吹ジュン、武田真治、役所広司

ストーリー

 一人暮しで平凡なOL生活を送るミチ。ある日、ミチの同僚が自殺。勤め先の社長は失踪。次々に友達が、家族が消えていく…。一方、大学生活を送る亮介にはインターネットを介して奇妙な現象が起き始める。 胸騒ぎを感じた亮介は、同じ大学で奇妙なインターネット・サイトを研究している春江に相談を持ちかけるが…。

レビュー

 「黒沢君、インターネットをテーマにして「リング」みたいな感じの怖い映画を1本しくよろ!」みたいな感じで作られたのだろうが、まさかこんな破天荒な作品が生まれるなんて誰も想像できなかったであろう。序盤こそは割と正統派な怪談話の体裁を保っているものの、物語は現代人のコミュニケーション不全に警鐘を鳴らすかのような哲学的な話へと次第に脱線していき、後半は何とディザスタームービーさながらに世界の終末が描かれる。一体これのどこがホラー映画なんだとツッコミたくなるが、これでも数ある黒沢映画の中では比較的クセの弱い方なので、本作を観て少しでも拒否反応が出た人は黒沢映画を鑑賞するのは金輪際避けた方が良いだろう。言うなれば、今後黒沢清映画を観る上での参考になるリトマス試験紙のような作品なのである。

 本作の幽霊描写で未だに語り草となっているのが、開かずの間に入った矢部が遭遇する不気味な女性の亡霊だ。生きた人間とは異なる、極めて不自然な動きで、じわりじわりと近付いてくるインパクトは相当なものであるが、実はこのシークエンスが鶴田法男監督による「ほんとにあった怖い話」の「真夏の体育館」のクライマックス部分を丸ごとパクっているということは一部では有名な話である。また、本作における怪異の原因となっている「あの世の許容範囲の限界」という設定には、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」でピーターが語った名台詞「地獄が満員になると死者が地上に溢れだす」にも通じるものが感じられ、「ゾンビ」をJホラーという全く別の器に盛り付けた作品という解釈もできて面白い。パソコンを介して溢れだした幽霊が現世を乗っ取り、あの世とこの世が逆転する終盤の絶望感から、僅かな希望を求めて船が出航する結末への流れは何度観ても素晴らしく、普通のJホラーとは一味違う余韻が印象深い1本である。

 

こける幽霊に世界が仰天した

 

 

今見ると合成丸分かりだが、当時は度胆を抜かれた墜落シーン

 

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