11:46
ジュウイチジ ヨンジュウロップン

監督:モーリス・デヴェロー

脚本:モーリス・デヴェロー

出演: イロナ・エルキン、ニコラス・ライト、
ティム・ロゾン、ニール・ネイピア

ストーリー

 看護師のカレンは、忙しい1日を終え地下鉄に乗っていた。すると突然停電になり電車が緊急停車。その日、地下鉄でクリーチャーに襲われる幻覚を見ていたカレンは不安に陥る。しかし、すぐにマイクという青年とベティという老女が車両にやってきたおかげで気を取り直す。その時、ベティのポケベルが鳴ると彼女の様子が豹変。突如、十字架の短剣を振りかざしマイクの背中を刺した。車内では、「希望の声」という教団の信者たちが「審判の時」が近づいている。あなたたちの魂を救済する、と主張し、次々と剣で乗客を殺害していた。カレンとマイクたちはトンネル内を逃げ惑い、制御室に入る。しかし、そこにあったTVには更に崩壊した外の世界が映し出されていた…。

レビュー

 「0:34」に便乗した邦題と適当に作った感じのジャケットでかなり損をしているが、中身は近年稀に見る“本当に怖いホラー映画”である。普段何気なく利用する地下鉄。そこで乗り合わせた不特定多数の乗客らがポケベルのメッセージひとつで殺人鬼に変貌するシチュエーションそのものがまず怖い。彼らは全員とある新興宗教団体の信者であり、ポケベルに送信された内容は「間もなく審判の時で悪魔が降りてくる。信仰を持たない者たちを救済せよ」というもの。要するに悪魔に殺される前にウチらで楽に死なせてやろうぜ、という非常にありがた迷惑な上に始末に負えない話で、当の本人たちは純粋なる善意で殺しに掛かってくるのだから無茶苦茶タチが悪い。

 しかも相当数の信者がいるようで、リーマン風の男性から人当りの良さそうな老婆、幼い少年や入信する前から明らかに狂ってた奴までよりどりみどり。おまけに主人公と行動を共にして逃避行をするメンバーの中にも教団への入信を条件に美人妻をゲットしたボンクラ男がいたりするので、疑心暗鬼で四面楚歌な絶望ムードが物語全体に異常なまでの緊張感を醸し出している。駅の制御室のテレビは全てのチャンネルに赤い液体を写す意味不明な映像が流されており、各地のテレビ局が信者たちに占拠されていることを物語っていて、思わず背筋が寒くなる。

 残酷描写も一筋縄ではいかず、グロイというよりは痛いシーンが多いのも実に厭らしい。それが顕著に現われているのが信者連中がメインウェポンとして使用する十字架に仕込まれたナイフだ。これがまた中途半端な長さで確実に一発では死ねない仕様になっているのだ。しかも彼らは別に殺しのプロでは無いので、慣れない手付きで背中や腹部を何度もグサグサと刺してくるのだから堪ったものではない。大剣を振りかざす豪快な輩もいるが、彼もジェイソンの様に気持ち良く首を撥ね飛ばす技量を持ち合わせていないので、犠牲者は中途半端に首が繋がった状態で絶命する羽目になる。他にも、妊婦の腹を切り裂いて胎児を取り出す鬼畜シーンが普通にあったりするので、こんな夜は一杯やらないと眠れそうにない。

 ラストには思わぬどんでん返しがあり、殺人行為を繰り返していた信者たちが唐突に皆で仲良く服毒自殺をし、本当に予言通り悪魔がワラワラと暗闇から現れて終劇となる。彼らの殺戮行為は極めて合理的な活動だったのではないかと思わせると共に、この世の終末を予感させる後味最悪の結末であるが、ややこしいことにヒロインが妙な幻覚症状に悩まされている伏線が冒頭から張り巡らされているので、結局最後の悪魔もただの幻覚だったという解釈も出来る。いずれにせよスッキリしない結末だが、ここで登場する悪魔のビジュアルインパクトは強烈である。あの場でいかにも悪魔悪魔した奴がCGの羽をバッサバッサさせて降臨してきたら興醒めするだろうし、あれくらいチープな方が逆に不気味さを煽っていて良い。この結末も含め、久々に後を引く怖さのあるホラー映画を観た気がした。日頃地下鉄を利用していて、尚且つグロ耐性のある人は存分に恐怖できる作品である。

 

ポケベルのメッセージで殺人鬼へと変貌する宗教ババア

 

 

見よ、この中途半端な長さのナイフを!

 

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