ジュラシック・シティ
監督:ジェイ・アンドリュース
脚本:ジェイ・アンドリュース、マイケル・B・ドラックスマン、 フランセス・ドール
製作総指揮:ロジャー・コーマン
出演:エリック・ロバーツ、コービン・バーンセン、 メリッサ・ブラッセル、ティム・アベル
ストーリー
化石から採取したDNAを基に恐竜を再生し軍事的に利用しようとする驚愕のプロジェクト、ジュラシック計画。国防省と科学者たちが推し進めてきたその計画は十数年前に中止されていたが、現在でも一部の科学者たちが閉鎖された施設で秘密裏に研究を続けていた。しかし、恐竜が施設を脱走し街中はパニック状態に陥る。警察は施設への電力供給を止めるが、恐竜たちを囲っていたレーザーシールドが解除され、逆に恐竜たちが大都市で猛威を振るう危険性が…。事態を憂慮した国防省は海兵隊の出動を決断する。
レビュー
スピルバーグの「ジュラシック・パーク」に目を付けたロジャー・コーマンが、マイケル・クライトンの原作に影響を与えたと言われるハリー・アダム・ナイトの「恐竜クライシス」の映像化権を光の速さで買い取り、更には「ジュラシック・パーク」のヒロイン役ローラ・ダーンのお母さんであるダイアン・ラッドを主演に起用し、突貫工事で映画を完成させて本家よりも先に公開するという偉業を成し遂げた「ダイナソークライシス(旧題:恐竜カルノザウルス)」であるが、本家を遥かに凌ぐ凄惨なスプラッター描写が一部の好事家に受けてしまい、完全に調子に乗ったコーマンはその後2本の続編を立て続けにリリースした。しかし、それだけの成功では100本の映画を作って10セントも損をしなかった男の野望は到底満たされる筈もなく、今度は「ジュラシック・パーク3」の公開にぶつける形で新作を1本でっち上げることにした。それが本作、「ジュラシック・シティ」なのである。
恐竜の襲撃シーンは「ダイナソークライシス」シリーズから余すことなく流用し、主演にはジュリア・ロバーツのお兄さんであるエリック・ロバーツという、これまた華があるんだか無いんだか微妙な役者を起用。ストーリーは、田舎町で起こった惨殺事件を捜査する保安官とその元カノである動物保護官の2人が、クローンで復活させた恐竜を軍事利用する研究を秘密裏に行っている施設の存在を知り、色々すったもんだの末に全てをぶっ壊すという実にスッカラカンなものであり、過去作からの流用映像を本編から削除すれば30分にも満たない映画であることは明白。しかし、この映画の見どころは正にその流用テクニックの部分にあると言っても過言では無い。例えば、政府が施設に派遣した海兵隊は、何故かデザインがバラバラの迷彩服を着ている混合チーム。これは、「ダイナソークライシス」の1〜3の全てから恐竜に殺される軍人のシーンを使い回している為、流用映像に合わせて本編を制作しているからこそ生まれた衣装デザインなのである。同じく、研究を行う博士の女性助手が、研究員にそぐわない妙にスポーティな格好をしているが、これも彼女の死ぬシーンが「ダイナソークライシス2」の女戦士がラプトルに食い殺されるシーンの流用だからである。その為、どいつもこいつも恐竜に食われる直前で顔が別人にチェンジするのだが、そこを突っつくのは野暮というものだろう。そう、クライマックスを彩るショベルカーvsティラノサウルスのバトルで、途中で明らかに白のショベルカーから黄色のフォークリフトに変化していることなどは些細な問題なのだ。
そして、この映画を語る上で外せないのが序盤で繰り広げられるセックスシーンだ。ホラー映画のお約束として、エロいことをしているカップルが行為直後に殺されるという展開があるが、本作においてはそのセックスがとにかく長い。実際に計測をしてみると、何と7分間にも渡って延々とセックスをしている。そんなに沢山セックスを見られるなんて結構じゃないかという意見もあるだろうが、交わされる体位は常に騎乗位のみだし、男が上体を起こして女の左乳首を舐めるという展開を何度も見せられるのは如何なものか。これは決して大袈裟に言っているわけではなく、女が男の上で激しく腰を振った後、男がおもむろに起き上がって女の左乳首を舐めるという映像がまるで無間地獄の如く繰り返されるのだ。何故、コイツは左の乳首ばかりを責めるのか。答えは簡単で、途中で巧みに映像をループさせているからである。こんな尺合わせなど、未だ嘗て見たことも聞いたこともない。流石は低予算と早撮りが信条の男、ロジャー・コーマン。彼の映画術を学ぶには絶好の資料となる作品である。 |