マタンゴ

監督:本多猪四郎

脚本:木村武

出演:久保明、佐原健二、太刀川寛、
土屋嘉男、小泉博、八代美紀、水野久美

ストーリー

 大海原にヨットで乗り出した男女7人のグループ。しかしヨットは突然の嵐に遭遇し、絶海の孤島に漂着してしまう。水と食料を求めて島を探索する7人は、島の反対側の入り江で難破船を発見する。だが、乗組員は一切行方不明、船内には少量の缶詰と“マタンゴ”と表示された謎のキノコの標本があるのみで、何故か船内の鏡はことごとく割られていた。一体、この島にはどんな秘密があるのか?やがて食料は底を尽き、彼らは、不信感と欲望を剥き出しにして仲間割れを始める。絶望的な飢餓の中、次々と禁断のキノコを口にするのだった…。

レビュー

 日本が誇る怪奇映画の傑作である。巨大なキノコの化物がゾンビのようにユラユラと群れをなして襲ってくるクライマックスシーンも強烈だが、無人島で遭難という極限状態に陥った登場人物たちの醜い争いの数々が見続けるのが苦痛なくらい絶望的なムードを作り出している。これは日本版「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」だ。といっても製作年はコチラの方が先だが、人間の醜さを全面に押し出したドライな作風は両作に共通しているように感じられる。

 マタンゴと呼ばれる毒キノコを口にしてしまった人間は、徐々に体がキノコに侵食されていき、やがては巨大キノコ人間へと変異してしまうのだが、そのキノコ人間は別に殺人を犯したり、ましてやゾンビのように臓物を食らったりすることはしない。ただひたすら、不気味な笑い声を轟かせながら近付いてくるだけなのだ。それが妙に恐ろしく、気ぐるみ丸出しの貧乏臭い外見と相まって悪夢を見ているかのような印象を抱かせる。半キノコ状態にあるゾンビみたいな奴も、特に何をするわけでもなく船内をただうろつくだけだし、水野久美が演じる麻美に至っては、飢えに苦しむメンバーに救いの手を差伸べるかのごとく、積極的にマタンゴを食べさせようとする。こうなると、どうしようもないことでいがみ合っている人間達の方が滑稽に思えてくるから不思議である。ラスト、唯一島を脱出した村井が病室で語る「あの島に残っていれば良かった」という台詞が胸にズシンと重たく残る。人間らしさを失った者で溢れ返る都会の街よりも、キノコ人間が和気あいあいと暮らすあの島の方がずっと良い。何ともやるせなくなる結末である。

 尚、角川ホラー文庫から出版されている吉村達也著の「マタンゴ 最後の逆襲」は本作の正式な続編であり、バカな学生グループが富士の樹海でキノコ人間に遭遇し、そこからとんでもない惨劇に発展するというもの。本作で生き残った村井のその後が明らかになったり、絶対死んだと思ってたあのゲス野郎が再登場したりと、マタンゴファンには必読の一冊となっている。

 

慣れない無人島生活に苛立ちを募らせるメンバー

 

  

おいひぃ〜。あんたも食べてみたら?

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送