ゾンヴァイア 死霊大血戦
監督:オラフ・イッテンバッハ
脚本:オラフ・イッテンバッハ
出演:マイケル・カー、ラッセル・フライデンバーグ、 キンバリー・リーベ、マティアス・ヒューズ
ストーリー
ウィリアムとルークのならず者コンビは何処までも続くカルフォルニアの砂漠をさ迷っていた時、精神を完全に病んだ男マイクと出会う。奴の正体は連続猟奇殺人犯なのだが、気付いた時はもう手遅れでマイクを捕えにきた警官隊との銃撃戦に巻き込まれてしまう。一方、別の場所、別の時…。悪魔レギオンのしもべハンクとハーヴィーは言いつけに従い、魔性の女ジーナを探していた。2人がまぐわうと世界は未来永劫に渡り悪魔の統治下と化すのだ。この2組がやっとの事で辿り着いた場所。そこは死霊どもが巣食う魔窟。ゾンビとヴァンパイアが融合した恐るべき怪物ゾンヴァイアに囲まれた彼等は血みどろの戦いに突入した…。
レビュー
「新ゾンビ」は誰がどう見ても勢いだけの映画であったが、そのタガの外れた情熱が業界の偉い人の目に留まってしまい、絶対にやめた方が良いのにイッテンバッハはハリウッドで映画を撮ることになってしまった。そんなわけで本作はイッテンバッハの記念すべきハリウッドデビュー作なのだが、これがすこぶる面白くない。これがイッテンバッハという男の限界なのか、はたまたイッテンバッハがハリウッドという巨大資本に骨抜きにされてしまった結果なのかは不明だが、誰もが期待した「新ゾンビ」のようなゴア描写満載のホラーアクションとは程遠い出来なのである。
ストーリーは前半クライムサスペンス、後半はゾンヴァイア(ゾンビ+ヴァンパイアの造語)蔓延る酒場を舞台にした大殺戮劇という、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を堂々とパクった構成であるが、とにかく圧倒的にゴアが不足しているので、イッテンバッハ特有の話運びのトロさだけが目立ってしまう悲惨な仕上がりに。「新ゾンビ」のポコチン・スライディングや鼻クソ・ホールインワンみたいな小学生レベルのギャグも控え目で、待ちに待ったラストの大殺戮も明らかにスケールダウンしている。戦闘の最中にショットガンをクルクル回転させて無駄に決めポーズをするシーンと、たった一撃で顔面が爆発して死亡するラスボスのポンコツ具合に辛うじてイッテンバッハ・イズムを感じるものの、俺たちが見たかったチェーンソーや戦車は最後まで出てこない。イッテンバッハのくせに守りに入ってんじゃないよ!
それにしても、「バンク・オブ・ザ・デッド」しかり、「エクスタシー・オブザ・デッド」しかり、ゾンビ映画を観ようとしたら「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の劣化版だったというパターンを既に3回経験しているのだが、世の中には「フロム・ダスク・ティル・ドーン」をパクった映画があまりにも多すぎるのではないか。あれは前半のクライムサスペンス部分で緊張感の積み重ねを丁寧に描写出来る監督だからこそ成立させられる高度な一発ギャグなのであって、どこの馬の骨かも分からん奴がおいそれと真似できるもんじゃないのだ。特に、頭からユルユル演出全開のイッテンバッハには、恐ろしく不向きなフォーマットにも思えるのだが…。
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