ルチオ・フルチの
新デモンズ

監督:ルチオ・フルチ

脚本:ピエロ・レニョーリ

出演:ブレット・ハルゼイ、メグ・レジスター、
アル・クライヴァー、リノ・サレム

 ストーリー

 イライザは、遺跡の発掘調査を行なう考古学グループのメンバーとして、シチリア島を訪れる。やがて、十字架に5人の修道女が磔となっている、廃墟と化した修道院を発見するが……。

レビュー

 晩年のルチオ・フルチによる「地獄の門」の焼き直し作品であるが、全盛期の頃にフルチと組んでいた特殊メイクアップアーティストのジノ・デ・ロッシや作曲家のファビオ・フリッツィといった優秀な人材はフルチの元を離れてしまい、フルチ作品をフルチ作品たらしめていた脚本家のダルダーノ・サケッティも本作では不在。その代わりと言っては何だが、ゾンビ3」「ナイトメア・シティ」のピエロ・レニョーリが本作のシナリオを手掛けている点が唯一マカロニホラー好きの琴線に触れる人選チョイスなのかもしれないが、それで喜ぶ人間はよっぽどの好き者であろうことは言うまでもない。

 物語はとにかく「地獄の門」超劣化版である。降霊術が発端となり、忌まわしき惨劇の舞台となった遺跡の封印を解いてしまったヒロインの周囲で起こる理不尽な死亡事故。しかし、この映画は往年のフルチ映画のように、パワフルなゾンビが豪快に後頭部を握り潰すこともなければ、不安定な場所に置かれていた硫酸入りのビンが顔面に落ちてくることもない。勢いを失った老いぼれジジイと化したフルチが描くのは、修道女の亡霊が水中銃を発射したり、酔っ払いが勝手に足を踏み外して穴に落ちたりする淡白な死亡シーンばかり。ロケ地であるシチリアの美しい景色と、何故か2回も登場する遺跡発掘隊のクソどうでもいい乱痴気騒ぎのシーン、更にはフルチ本人が演じる刑事役の一向に真相に辿り着けない迷探偵ぶりが睡魔を加速させ、寝落ち必至の作品であることは否定できないだろう。

 しかし、そこはやはり腐ってもフルチである。フルチ映画の目玉といえば「目玉の破壊であることは義務教育を受けた者なら周知の事実であるが、本作でも「ヒロインに助言を与える謎の女性」という「ビヨンド」のエミリーに相当するキャラの目玉が見事に破壊される。それも、エミリーが飼い犬に噛み殺されたのに対し、本作の謎の女性は飼い猫に目玉を引っこ抜かれるというセルフオマージュっぷり。これだけでも映画の元は充分に取れているといっても過言ではないが、ダメ押しに子供の前で父親が豪快な股裂き刑に処せられるショックシーンが唐突に描かれ、これまでの睡眠導入剤さながらの展開をチャラにするかのような底力を見せてくれるのだ。フルチ、やっぱりアンタは最高の映画監督だったよ…。本作を観賞後、天に向かってそう呟いたのは俺だけではないと信じたい。

 

フルチといえば目玉!いよっ!待ってました!

 

唐突すぎて笑うしかない股裂きシーン

 

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