貞子

監督:中田秀夫

脚本:杉原憲明

原作:鈴木光司

出演:池田エライザ、塚本高史、清水尋也、
姫嶋ひめか、桐山蓮、ともさかりえ、佐藤仁美

ストーリー

 心理カウンセラーの茉優のもとに、ひとりの記憶障害の少女が入院してくる。やがてその少女は、1週間前に公営団地で起きた放火事件の犯人・祖父江が人知れず生み育てていた子供であることが判明。少女と真摯に向き合う茉優だったが、次第に彼女のまわりで奇妙な出来事が起こり始めるー。一方、WEBマーケティング会社に勤める祐介の薦めで動画クリエイターになった、茉優の弟・和真はアクセス数の獲得に焦るあまり、心霊動画を撮ろうとその火災跡に忍び込むが、動画をアップしたのちに消息を絶ってしまう。茉優は拡散された動画を探し出し、再生してみると、和真の背後に長い髪の女が立っていて…。

レビュー

 既に承知の人も多いと思うが、「リング」のその後を描いた続編は飯田譲治監督の「らせん」と、中田秀夫監督の「リング2」の2本が存在している。これら2本は完全に別の時間軸の話であり、リアクションに困るくらい馬鹿馬鹿しい映画だった英勉監督の貞子3D」「貞子3D2」の2本は、実は「らせん」と同じ世界観を共有した作品である。それに対し、「リング2」ルートの続編はこれまで存在していなかったのだが、中田監督が遂に重い腰を上げて「リング2」の続編に挑んだのが本作「貞子」なのだ。これがどれほど凄いことなのかと言うと、「エイリアン」を生み出したリドリー・スコットが「プロメテウス」を撮るのと同じくらい凄い。ようやく真打ち登場といった感じで、ファンなら無条件で興奮してしまうことは間違いないのだが、公開初日に鑑賞して劇場を後にした俺の心は悲しみに満ち溢れていた。例えるならば、リドリー・スコットの「プロメテウス」を観たときの感情に似ている。ようするに面白くない

 本作には鈴木光司の「タイド」というタイトルの原作が存在しているが、これが驚くべきことに貞子の出生に関する一部の設定を拝借しただけで他は全く関係がない。「バースデイ」を原作としたリング0バースデイ」も鈴木光司ファンからしてみれば結構な原作レイプであったが、本作に於いてはスティーブン・キングの「芝刈り機の男」と「バーチャル・ウォーズ」くらい関係がない(多分誰にも伝わらない)。呪いの媒体がVHSからネット動画へと進化している設定も完全に「貞子3D」や「ザ・リング リバース」の後追いになってしまっているし、貞子と同様の力を持つ少女が登場するのも「貞子3D2」で似たような物語を見たばかりなので新鮮味は全くない。というか、「貞子3D2」脚本家が同じだからなのか、この話は「貞子3D2」同様に話がとっ散らかっていて恐怖の焦点がイマイチ絞れていない

 貞子の生まれ変わりとされる少女が物語全体における恐怖の対象なのかと思いきや、その少女はかつて死んだOLやお爺ちゃんの残留思念に襲われたりするし、「リング」と「リング2」の悪夢を生き延びた佐藤仁美は何故か気味の悪いストーカーおばさんキャラへと変貌を遂げて本筋とは無関係に狂気を振りまくし、肝心の貞子はやってみた系のユーチューバーに呪いを掛けたかと思いきや、その件とは微塵も関係がない佐藤仁美を呪い殺したりするしで、一体俺は何の映画を観ているのかと首を傾げたくなる。中田監督作品は好きだが、今回は高橋洋や三宅隆太といった優秀な脚本家と組んでる時のキレが全くないのだ。唯一、褒めるポイントがあるとするならば、ビデオカメラ片手に呪いの団地へと突撃するユーチューバーの臨場感溢れる主観映像であるが、これが何と中田監督はノータッチあのシークエンスは全てカメラを持たせた俳優に任せていたというのだからもう笑うしかない。

 俺がバカなだけなのかも知れないが、とにかくこの映画の内容がまるで理解出来ない。謎の少女は最後まで謎のまま終わるし、「リング」や「貞子3D」みたいに呪いの映像を見たから貞子の呪いに掛けられるという筋書きでもないから何が原因で登場人物が呪われてるのかも分からないし、塚本高史が何のために存在してるのかも分からないあまりにも分からないことだらけなので、角川ホラー文庫と角川つばさ文庫(児童向け書籍)のノベライズ2冊を買って読んでみたが、謎の少女が貞子と異母姉妹の関係にあるとか、塚本高史が「リング」で松嶋菜々子が残した取材メモを所持しているといった重要な真相が描かれていて、映画よりも幾分か納得のいく話になっていたが、それでも本作はストーリーに推進力が無さすぎる。仮に次作があるのならば、高橋洋にカムバックしてもらうことを願うばかりだ。

最後まで謎のままで終わる謎の少女

 

何故かストーカーおばさんと化した佐藤仁美

 

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