がっこうぐらし!

監督:柴田一成

脚本:柴田一成

原作:海法紀光、千葉サドル

出演:阿部菜々実、長月翠、
間島和奏、清原梨央、おのののか

ストーリー

 シャベルを愛する胡桃、ムードメーカーの由紀、みんなのリーダー的存在の悠里は、私立巡ヶ丘学院高等学校・学園生活部に所属する女子高生。学校で寝泊まりし、24時間共同生活を送る学園生活部で“がっこうぐらし”を満喫中だ。みんなと一緒にご飯を食べて、みんなと一緒におしゃべりをして。屋上に作られた園芸部の菜園では、野菜だって収穫できる。「学校ってすごいよね。電気も水も野菜も作れるし、音楽室、図書室、放送室…。なんでもそろってる!」と由紀もご機嫌だ。学校には友だちもいるし、大好きな保健の先生・めぐねえの授業だって受けられる。そんな学校が本当に大好き。しかし元気いっぱいの由紀を、教室の外から胡桃と悠里が心配そうに見つめている。この学校は何かがおかしい…。

 胡桃と悠里の視線の先には、机や椅子が無惨に倒された教室にぽつんと立つ由紀の姿が。床には割れたガラスの破片が飛び散り、カーテンや黒板には血の跡がベッタリ。そして校舎の中庭には痛みを感じない“かれら”がうろついている…!学園生活部の活動とは、すなわち“かれら”の脅威から身を守りサバイブすること。だがそんな極限状態の中でも、顧問のめぐねえの優しさ、自分の世界に生きる由紀の天真爛漫さがみんなの支えとなっていた。ある日、食料を調達しに行った胡桃と悠里は、ひとり生き延びていた美紀を発見、一緒に暮らすことになった。最初は心を閉ざしていた美紀だが、時にケンカし、笑い合ううちに次第に部員たちと絆を深めていく。だが、そんな楽しい日々も長くは続かない。最大の危機が彼女たちに襲いかかる…!

レビュー

 まんがタイムきららフォワードで連載中の千葉サドルによる漫画作品の実写映画化。既にアニメ化もされているので、この作品に仕掛けられた凶悪なトラップについて御存知の方も多いと思う。原作漫画、及びアニメ版の第1話は「けいおん!」に代表されるような日常系アニメのテイストで始まり、タイトル通り、学校で暮らす「学園生活部」のゆるくて可愛い日々が描かれる。ヒロインもテンプレ通りの天然ボケキャラであり、「ああ、またこの手の作品か」と誰しもが思っていたところで、終盤に驚愕の種明かしがされる。実は学校の周りは無数のゾンビが包囲しており、校舎に立て籠っている登場人物らは学校での生活を余儀なくされていること。そして、天然ボケキャラのヒロインはゾンビの襲撃により完全に頭がおかしくなっていたという残酷な現実が明らかになるのだ。しかし、その後はよくあるゾンビサバイバルものに落ち着いてしまい、正直なところ1話のインパクトのみが語り種になっている印象のある作品であるが、遠足、文化祭、卒業式と、極限状態にも関わらず登場人物が律儀に学校行事をこなしていく様が楽しい作品でもあり、青春ゾンビホラーとしての評価も高く、熱狂的なファンも多い。 

 主演が秋元康プロデュースによる演技経験ゼロのアイドル、監督が「リアル鬼ごっこ」の柴田一成、ネタバレ要素全開のキービジュアルや予告編といった、公開前からファンを萎えさせる情報が多かった本作であるが、これが意外なことにコミックの実写化としても、アイドル映画としても、そして勿論ゾンビ映画としても優等生な作りになっており、和製ゾンビ映画としては「アイアムアヒーロー」に次ぐクオリティの作品であるといっても過言ではないだろう。物語は原作コミックの5巻分を上手く100分程度に収めており、愛用のシャベルで果敢にゾンビに立ち向かうツインテールの少女・胡桃を中心に、時折ゾンビ発生前の回想シーンを挟みながらストーリーが進行していく構成も分かりやすくて良い。主演アイドルたちによるコミカルな日常シーンとゾンビ襲撃シーンとの緩急の付け方も上手く、日常系ゆるふわアニメとガチホラーが混在しているカオスな世界観を見事に実写化していたといえる。

 また、本作はロメロ御大が「ゾンビ」で描いた、「確実に迫り来る世界の終末から目を背け、自分たちが築き上げた有限の楽園を謳歌する」というテーマを、ショッピングモールを学校に置き換えた形でバッチリと継承しており、そういった意味でも全力で支持したい作品である。ザック・スナイダーによる「ゾンビ」のリメイク「ドーン・オブ・ザ・デッド」で、モールでの楽しい日常をリチャード・チーズによる「Down with the Sickness」のアレンジに乗せてダイジェストで流すシークエンスが存在したが、本作でも似たような場面が存在し、そこでは卒業式の定番ソング「大切なもの」が挿入歌として流れるのも実に印象的だ。有限の楽園が崩壊を迎え、「進学」と称して次の籠城先を大学に決めたメンバーが車で出発する結末も爽やかな余韻を残してくれる。青春ゾンビ映画としては隙の無い完成度といえる作品だろう。

 

外がゾンビだらけでも学園生活を満喫するメンバーたち

 

ゾンビのクオリティも水準以上で製作陣の本気を感じる

 

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