怪談新耳袋[劇場版]
幽霊マンション

監督:吉田秋生

脚本:渡邉睦月

原作:木原浩勝、中山市朗

出演:黒川芽以、吹越満、根岸季衣、
曽根英樹、伊佐山ひろ子、滝沢涼子

ストーリー

 フリーライターの父・充とともに古いマンションに引っ越して来た17歳の少女、愛美。そのマンションの表には、1本の白線が引かれていた。「必ず夜中の12時までに、この線の内側に入らなければいけないよ」。このマンションは普通じゃないところがあった。零時までに戻らなかったり、異変に怯えて出ていこうとする人たちは、次々に不審な死を遂げていく。ここには30年前に行方不明となった少女の霊がとりついていた。次々と愛美を襲う恐怖。逃げることはできない。そして恐怖は、愛美の抱える“暗い記憶”と“悲しみ”までも暴き出していく…。

レビュー

 1話5分のショートストーリー形式のドラマとして映像化された中山市朗と木原浩勝による実話怪談集「新耳袋」の初となる長編映画。京都にマジで実在した怪奇現象が頻発する曰く付き物件を舞台に、TVシリーズでもメインヒロインを演じた黒川芽以が引き続き主演を務めている。映画本編の話とは少し逸れるが、数々の心霊スポットに突撃取材を敢行して怪異を記録するドキュメンタリー「怪談新耳袋 殴り込み!」においても京都の幽霊マンションは題材にされており、そこに入居していた漫画家の体験談は下手なホラー映画よりも怖い。何もしていないのに勝手に起動し、レンズが自動で伸びたり縮んだりするデジカメ。徐々に黒ずんでいく数珠と、奇妙な形に変型した菩薩像は何度見てもゾッとさせられる。他にも、何故か入居者の自殺が後を絶たず、遂には無関係な人まで引き寄せられるかのようにマンションから身を投げてしまうなど、とにかくヤバイ話には事欠かない物件なのだ。

 映画は完全オリジナルストーリーで、黒川芽以演じるヒロインと父親がマンションに入居してくるところから始まる。マンション前に張られた1本のロープ。引っ越しを入居者総動員で手伝ったり、父娘と入れ違いで逃げるように部屋から退去していく家族など、早くも不穏な空気を感じるヒロインであるが、やがて彼女はこのマンションに伝わる奇妙なルールを知る。それは、深夜0時までに必ずロープを越えてマンションに戻らなければならない。新しい入居者が来たら、一番古い入居者が退去することが出来る。その掟を破った者は、マンションの呪いの主である少女の怨霊に祟り殺されてしまうというのだ。つまり夜勤のある人が入居したら死亡確定である。マンションには様々な住人が住んでおり、中でも悲惨なのは会社命令である転勤を断り続けた結果、無職になってしまった若夫婦だ。ゴミを漁り、調味料の塩を舐めて飢えを凌ぐ毎日。遂には食べる物も無くなり、お互いの手首を切って血を啜り合うシーンは、狂気と滑稽さを兼ね備えた名場面であると言えよう。

 しかし、中には掟に逆らってマンションを出る者もいて、ヒロインが密かに心を寄せていた男性は、呪いなんてクソ食らえの精神で両親と共に大阪へと引っ越す。家族の誰もが「本当に死んだらどうしよう」という想いを抱いたまま、とりあえず人の多いレストランでひたすら時間の経過を待つものの案の定深夜0時に少女の怨霊によって全員呪い殺されてしまう。「死のタイムリミット」が迫っているのにも関わらず、何も対策出来ずにいるもどかしさや、携帯電話の液晶から怨霊が登場する展開は「リング」からの影響が多分に感じられて面白い。愛する者を失い、真相の究明に乗り出したヒロインは、マンションの開かずの部屋で少女の白骨死体を見つける。ここからクライマックスにかけて驚きのドンデン返しがあり、何とヒロインは少女の霊と結託して父親を殺してしまう実はヒロインは父親から性的虐待を頻繁に受けており、少女の霊も同じ境遇のまま亡くなったのだそうだ。同じ傷を抱えた者同士の2人が、誰もいなくなったマンションの一室で手を繋いだまま終わるラストシーンは、最悪のハッピーエンドとも最悪のバッドエンドともとれる、何とも不思議な余韻を残してくれる結末である。

 

   

      食べる物が無くなり、お互いの血を啜る夫婦                  哀愁溢れる素晴らしいラストシーン

 

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