IT ‐イット‐

監督:トミー・リー・ウォレス

脚本:トミー・リー・ウォレス、ローレンス・D・コーエン

出演:ハリー・アンダーソン、デニス・クリストファー、
リチャード・トーマス、ティム・リード、ティム・カリー

ストーリー

 メイン州デリーの町で起こった不可解な子供の連続殺人事件。それを知ったマイクの脳裏に、6人の仲間と共に身も凍る異常な体験をした記憶が蘇る。鮮血を噴き出す蛇口、そして背後から忍び寄る邪悪な影…。殺人事件とおぞましい体験のつながりを確認したマイクは、恐怖に震えながら昔の仲間に連絡をする。「あいつ=〈イット〉が戻ってきた」と…。

レビュー

 文庫本で全4巻という長大な原作を、前後編それぞれ90分でまとめたテレビムービー。吃音、デブ、喘息、黒人、ユダヤ人、空気が読めない、親父がキモイなどといった深刻な理由で周囲と馴染めずにいる訳ありキッズで構成されたルーザーズ・クラブの面々が、子供ばかりをターゲットにして町を恐怖に陥れているロリショタの殺人ピエロと対決するホラー版「スタンド・バイ・ミー」といった趣で、原作と同じように大人になったルーザーズ・クラブが子供時代を回想する形式で物語が進行していく。テレビムービーという制約もあり、子供の腕が食いちぎられたり、不良がデブの腹にナイフで名前を刻むといった残酷シーンは一切無く、みんなで麻薬を吸ってラリパッパになったり、みんなで仲良く穴兄弟になったりするといった倫理的にヤバイ展開もざっくりカットされてしまっている。

 それでも、殺人ピエロことペニー・ワイズの再現度は大変素晴らしく、多くの人が本作を見てピエロ恐怖症になったというのも頷けるビジュアルインパクトを放っているし、前後編合わせて180分という時間の中で、大人編と子供編が複雑に交差する映像化の難しい原作を何とか纏めているのは評価に値するだろう。批判の槍玉に挙げられるペニー・ワイズ最終形態のカニ道楽みたいな巨大グモも、今となっては味のある造形と特撮で、何だかほっこりさせてくれる癒しの存在であると言える。子供たちのトラウマとか恐怖の象徴であるペニー・ワイズの最後が何で巨大グモなんだよというツッコミもあるが、きっと描かれなかっただけでルーザーズ・クラブの皆さんは全員いじめっ子に無理矢理クモを食わされた過去があるとかそういう裏設定があるのだろう、きっと。

 なお、本作は2017年にリメイクされており、そちらは原作の少年期編だけを綺麗にピックアップし、2時間15分かけて少年たちの織り成す濃密なドラマとR15指定のエゲつない恐怖描写を余すこと無く描いている。観客動員数も上々で、既に続編の製作も決定しており、そちらは2019年に公開とのこと。今、自分が極めて穏やかな気持ちで旧版の本作を不自然なくらい擁護しまくっているのは、リメイク版の出来があまりにも素晴らしすぎてこの世の全てのことを寛大な心で許せる境地に達しているからであり、学生の頃にNHKで放送された本作を初めて鑑賞した時は、後編クライマックスのカニ道楽を見て普通に俺の3時間を返せと怒り狂っていたことも追記しておこうと思う。

 

 

この「スタンド・バイ・ミー」感がキングらしくて良い 

 

誰もが唖然としたクライマックス

 

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