アパートメント1303号室

監督:ミシェル・タヴェルナ

脚本:ミシェル・タヴェルナ

原作:大石圭

出演:ミーシャ・バートン、レベッカ・デモーネイ、
ジュリアンヌ・ミシェル、コリー・セヴィエール

ストーリー

 アルコール依存症の母から逃げるようにして、デトロイトの高層マンションで一人暮らしを始めたジャネットが、引っ越して数日後に、13階の1303号室のバルコニーから落下し死亡した。警察は自殺と断定したが、この結果に納得がいかない姉のララは、妹の死に関する真実を突き止めるために、ジャネットが住んでいた部屋に移り住むことに。しかしこの時はまだ、1303号室に隠された秘密と、我が身を襲う想像を絶する恐怖が待ち受けていることを知る由もなかった…。

レビュー

 日本人の撮るホラー映画はマジで怖え!」と世界中で評価され、「リング」「呪怨」「女優霊」といった傑作から、「仄暗い水の底から」のような佳作 、「回路」みたいな一部で熱狂的ファンを持つカルト作や、着信アリ」のようなどうでもいい作品までハリウッドが節操なくリメイクをしていたJホラーの黄金期。この流れに乗り遅れてなるものかと、とある企画が静かに進行していた。「呪怨」シリーズのノベライズ版を手掛けたこともある大石圭にオリジナルのホラー小説を執筆させ、それが書き終わる前からアメリカで映画化権のプリセールを行い、アメリカ出資で日本人向けとアメリカ人向け、両方の映画を製作するというホラープロジェクトである。プリセールは成功し、モンテクリスト・エンターテイメントという製作会社が全額出資をすることになったが、日本版作品である「1303号室」の監督に抜擢されたのが、「富江」「ひぐらしのなく頃に」及川中だったため、いつものように的外れな恐怖演出だけが印象に残る、怖くもなければ面白くもない凡作に仕上がった。ちなみにこの映画、2017年に18歳という若さで急死を遂げた私立恵比寿中学の松野莉奈も子役で出演しており、完全に存在が忘れ去られていた近年になって再び話題に上った映画でもある。

 日本版がコケたので、汚名返上とばかりに作られたアメリカ版の本作「アパートメント1303号室」は、恐怖感を倍増させるために流行の3D映画として製作。しかし、やはり今回も有名ホラー映画監督を雇う金をケチり、ホラー映画のホの字も知らないような人間が監督を務めた結果、面白くなかった日本版よりも更に面白くない映画が誕生してしまった。人物描写の掘り下げは日本版よりも希薄であり、ヒロインの母親や隣人の不気味な少女、変態の管理人や警察といった登場人物たちの大半は存在している意味がまるで無い。元凶となる悪霊に関しても、登場するまでの“間”だとか“溜め”の演出が全然なっていない上に、脱力するような空気の読めないCGエフェクトも加味されて心霊映画としての様式美などは皆無。お話としては「呪怨」とさほど変わらない内容なのにも関わらず、監督が無能だとここまで退屈な映画になってしまうものかと別の意味で感動させられる。

 というわけで、日本版とアメリカ版、どっちもクソという壮絶な結果で終わってしまった「1303号室」プロジェクトであるが、この斬新な製作体制は後に「END CALL」というホラー映画にも引き継がれることになる。そちらは未見であるが、恐らくロクでもない作品であることが推測されるので、今後鑑賞する機会は永久に訪れることはないであろう。アメリカ様も、日本人が作るホラー映画の全てが怖くて面白いワケではないということを学んだのか、Jホラーリメイクブームも急激に下火になり、日本国内でもJホラーブームの火付け役となった一瀬隆重のホラー映画制作会社オズが2015年に倒産。日本の怨霊が世界を席巻した時代は終焉を迎えたのである。  

 

 

顔色が悪いだけのお姉ちゃんにしか見えない幽霊さん

  

CG演出のせいで更に怖くなくなる幽霊さん   

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