貞子vs伽椰子

監督:白石晃士

脚本:白石晃士

出演:山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美、
田中美里、甲本雅裕、安藤政信

ストーリー

 偶然手にしたビデオデッキを再生した女子大生・有里。そこには、観るもおぞましい映像があった。観た者は、貞子から電話がかかってきて2日後に必ず死ぬという「呪いの動画」。その時から奇妙な現象が始まるのだった…。一方、親の転勤で引っ越してきたばかりの女子高生・鈴香は、向いの空き家が気になっていた。入ったら行方不明になるという噂の「呪いの家」。とある事件から家に足を踏み入れてしまったのを機に、彼女の身と家族に不可解な出来事が起き始める…。「呪いの動画」と「呪いの家」の2つの呪いを解くため立ち上がった、霊媒師・経蔵。彼が企てる秘策…、それは拮抗した力を持つ貞子と伽椰子を激突させ、同時に2つの呪い滅ぼすという驚くべき計画だった…。

レビュー 

 「貞子3D2」と「呪怨 ザ・ファイナル」の大爆死により、誰もが両作の終焉を予感していた頃に彗星の如く現れたまさかのクロスオーバー作品。しかし、この手の映画は監督の腕前が大いに問われるところであり、フレディvsジェイソン」も度重なる監督の交代や脚本のリライトがあって企画から完成までに7年もの歳月を費やしたというのは有名な話であるが、その背景には世界観の全く違う両作をどうやって1本の話に纏めるのか、そもそも特に戦う理由のない両者をいかにバトルへと持ち込ませるのかといった無理難題が大きく影響しているのだろうが、やはり最大の問題はそれぞれの作品を支持している熱狂的かつ面倒臭いファンをどう納得させるかということに尽きるだろう。そんなハードルの無茶苦茶高い作品の監督に抜擢されたのが何とノロイ」「シロメ」でフェイクドキュメンタリーの奇才の名を欲しいままにした白石晃士。「テケテケ」で「リング」のフォーマットを丸パクリしていたこの監督が、まさか本家の関連作を手掛けることになるとは一体誰が予想出来たであろうか。しかし、「コワすぎ!」シリーズの大ヒットにより、今もっともJホラー界で勢いのある人は白石晃士であることは揺るぎのない事実であり、実際に映画を見た今となってはこの起用は大正解だったと言えるだろう。

 まず上手いと思ったのが、呪いのビデオや佐伯家の存在が完全に都市伝説化しており、本作に登場する貞子と伽椰子が人々の集合的無意識による具現化あるという設定だ。「フレディvsジェイソン」は確かに素晴らしい映画であったが、マンハッタンまで海底を歩いて上陸した経験のあるジェイソンの弱点が水であるとか、壊滅した筈のスプリングウッドに普通に人が住んでるといった、過去作の設定と食い違う部分に違和感を覚えたものであるが、本作では呪いのビデオの映像が全然違う上にタイムリミットが1週間から2日に変わっていようが、伽椰子ハウスの間取りが大幅に違っていようが、こいつらは従来の山村貞子や佐伯伽椰子とは違う、人々の集合的無意識の具現化という設定なので別に気にする必要が無いのである。何だよこの万能な設定は。天才かよ。

 ストーリーも実にユニークであり、序盤はリサイクルショップで購入した格安ビデオデッキの中に入っていた呪いのビデオを遊び半分で見てしまった友人の呪いを解くために女子大生が奮闘する「リング」パートと、呪いの家の隣に引っ越してきてしまった女子高生の恐怖を描く呪怨」パートを交互に見せる構成になっており、中盤に登場する“ある人物”によって2つの線が1つへと重なっていく。その人物こそ、同監督の「カルト」に登場するNEOを彷彿とさせるエキセントリックな霊媒士と盲目の少女のコンビであり、このキャラクターの登場をきっかけに作品のテイストがJホラーからケレン味のあるゴーストバスターものへと大きく変わっていく。呪いの家で呪いのビデオを見ることにより、化け物と化け物を同士討ちさせて両者の呪いを消滅へと導く作戦を実行するため、夜の住宅街を4人が横並びで歩いていくカットの格好良さは只事では無い。ホラー映画は恐怖を売りにしているが、同時に恐怖へ立ち向かう者の力強さも描いたジャンルであるということに気付かされた瞬間であった。

 同士討ちを狙うつもりが、両者がフュージョンしてしまい更に凶悪な化け物・サダカヤが誕生してしまう結末はバッドエンドがお約束のJホラーらしい、100点満点なオチであったが、よくよく考えてみれば貞子にしても伽椰子にしても見た目はどちら白服に髪の長い女なので、両者が合体したところで大したビジュアルインパクトを与えていないのが少々残念なところであった。サダカヤの形態になる前に、これまた実に白石映画らしいクトゥルー風味の巨大クリーチャーが井戸の中で元気にのたくっていたが、当初の構想ではこの怪物が「ミスト」のクライマックスよろしく誰もいなくなった無人の町を徘徊する様がラストシーンだったらしい。個人的には、この結末にしてくれたら1億点の作品であった。

 

とてもホラー映画とは思えぬ格好良すぎるカット

 

 

実に白石映画らしいクトゥルー風味のクリーチャー   

 

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