ラビット・ホラー3D

監督:清水崇

脚本:林壮太郎、保坂大輔、清水崇

出演:満島ひかり、澁谷武尊、香川照之、
緒川たまき、大森南朋

ストーリー

 ブーム到来中の3D映画を鑑賞していた姉と弟は、突然スクリーンから飛び出してきたウサギの縫いぐるみを受け取ったことで、以来弟は夜な夜な階段の納戸から広がる不思議な世界に誘われてしまう。ウサギの着ぐるみがいる遊園地のような世界に不審を抱いた姉が弟の後を追うと、弟を連れ去ろうとするウサギ人が突如襲ってきて…。

レビュー

 「戦慄迷宮3D」と同様に富士急ハイランドのお化け屋敷をロケ地として使用しており、前作でも顕著であった人間の深層心理をメインテーマとした清水崇流のダークファンタジー。「呪怨の清水崇」というイメージを払拭したかったのか、タイトルに“ホラー”と付いていながらも、観客を本気で怖がらせようとしているシーンなどはひとつも無く、恐怖の対象となる存在も可愛らしいウサギの着ぐるみである。視覚で訴えるストレートな怖さよりも、登場人物たちが抱える心の闇の深さで心理的な恐怖を狙ったのだろうが、当然ながらそういったものは心理描写がずば抜けて上手い監督でないとなかなか成功させることは難しく、じゃあ清水監督が今まで手掛けた作品は人間ドラマが素晴らしかったのかと聞かれても、脳裏に浮かぶのは変な場所から変顔した幽霊が変なポーズで出てくるシーンばかりなので、さすがに今回ばかりは取り扱うテーマが監督の身の丈にあっていなかったのではないのかと個人的には思う。

 物語は実に複雑怪奇であり、失語症であるヒロインの弟は過去に学校のウサギを撲殺した経歴のあるちょっとヤバイ奴なのだが、ある晩、遊園地で不気味なウサギの着ぐるみに出会う夢を見て、目覚めたら何故か納戸にいた。何かを恐れる姉弟の父親は、誰も納戸に入れないよう扉に釘を打つ。それ以来、姉弟は不思議な現象に悩まされることになり、映画館で戦慄迷宮3D」を見ていたら、3Dで飛び出してきたウサギの人形が何故か実体化して弟がナイスキャッチしてしまうという楽屋オチ全開な体験もする。その晩、弟は遊園地に隣接する廃病院でウサギの着ぐるみに襲われる夢を見て、入れるはずのない納戸で目覚めたところを姉に救出される。この辺りで「弟は最初から存在しなくて全部姉ちゃんの1人芝居というこの映画渾身のドンデン返しが簡単に読めてしまうのだが、オチが分かっていながらもヒロインの長々とした茶番に付き合わなければならない虚しさといったら筆舌に尽くしがたい。

 その後、ヒロインの抱える「ウサギ、遊園地、病院」に関するトラウマが明かされていくのだが、肝心の「ウサギ」の部分があまりに突飛すぎるというか、そんなアホなことする奴はいねーだろと思わずツッコミを入れたくなる。クライマックスは、過去を受け入れて正気を取り戻したヒロインが父親を救うために具現化してしまった弟と対峙するという、少しだけ胸の熱くなる展開になるのだが、奮闘空しく全然納得出来ない理不尽な殺され方をして敢えなくヒロイン死亡。結局いつもの「呪怨」オチ発動で物語が終わる。前々から思ってたけどこの監督、絶対性格悪いだろ…。

 ストーリーはちょっとアレかもしれないが、役者陣の演技は本当に素晴らしく、元forderメンバーの満島ひかりは失語症という難しい役柄を見事にこなしていたし、脇を固める香川照之や大森南朋といった名優の演技も文句なしであった。また、撮影監督のクリストファー・ドイルが手掛けた3D映像は特に劇場のスクリーンで見ると効果絶大であり、これまで色んな3D映画を見てきたが、本作ほど画面の奥行きをリアルに感じさせる作品は無かったと断言しても良いだろう。尚、清水崇はよっぽど「呪怨」シリーズと距離を置きたいのか本作の後には児童文学を実写化した「魔女の宅急便」を手掛けるなどの迷走を続け、ホラーファンを心底ガッカリさせている。

 

 

白昼の小学校に現れるウサギ。不気味といえば不気味

 

満島ひかり、敢え無く脳味噌ぶちまけて死亡の図

 

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