恋愛死体
ラブゾンビ
ROMANCE OF THE DEAD

監督:友松直之

脚本:友松直之

出演:若林美保、小司あん、鳴瀬聖人、
貴山侑哉、黒木歩、ももは、高野駒子

ストーリー

 恋にオクテの高校生・将太。彼が密かに思いを寄せるのは、校内一のアイドル・ヒトミ。ある日の昼休み、将太はヒトミから呼び出され、誘われるがままに童貞を卒業する。将太はその日の放課後もヒトミの家に行くことになる。しかし、ヒトミの家で待っていたのは「無残にも喰い散らかされた死体」だった。義父から性的虐待を受けて自暴自棄になり、男たちとセックスを繰り返す中で、巷で蔓延しているゾンビウィルスに感染したという。優しく微笑むヒトミの隣で、生首を目の前にした将太を茫然とするが…。

レビュー

 「レイプゾンビ」シリーズの堂々たる完結により燃え尽き症候群に陥ったと思われていた友松直之であるが、それは勝手なこっちの思いこみで、彼のゾンビ映画創作への意欲はちっとも燻ぶっていなかった。ところが、彼の十八番であるエロ・グロ満載のゾンビ作品はVシネマ市場からは全く相手にされず、渾身の企画書は紙屑となる一方。そうなったら思い切って自主制作するしかないのだが、赤字連発の貧乏監督のどこにそんな貯金があろうか。だから誰でも良いので俺の口座にお金を振り込んでください!という雑なクラウドファンディングによって誕生した映画であり、そう書いている自分も散々タダでDVDを頂いていたという恩もあり、この作品に少しだけカンパをしていたりもするので決して他人事ではない。

 では、世の物好きたちから掻き集めたお金でこの監督が何を撮ったのかというと、これが意外なことに冗談抜きで泣ける大真面目な感動作であった。一体、この監督に何があったのだろうか。胸焼けするような友松節が全開だった「レイプゾンビ」シリーズで毒気を全て出し切ってしまったのか。はたまた、この監督にはあまり予算を与えない方が良かったりもするのだろうか。富士山噴火やテポドン投下といったバカバカしいスペクタクルは一切無く、童貞少年とゾンビ・ウイルスに感染したヤリマン少女との恋愛を、見ているこっちが恥ずかしくなるようなセンチメンタリズムで描ききっている。聞くところによると「君はゾンビに恋してる」の没脚本を元にしているとのことであるが、作品のテイストはむしろ「STACY」に近く、大槻ケンヂが許可しないであろうが、監督が以前から撮りたがっていた「STACY2」はもうこれで良いんじゃないかという気さえする。

 「ライフ・イズ・デッド」同様、ゾンビ・ウイルスは現実世界においてのHIVのように扱われており、手当たり次第に不特定多数の男とセックスしていたヒロインはそのウイルスに敢えなく感染。彼女はある目的を達成する為に主人公の童貞少年に近付き、2人はゾンビ化を完治することが出来ると噂されている研究所を目指して逃避行を続ける。学校内のアイドルと童貞少年。およそ釣り合わない2人が織りなすラブロマンスは、身勝手なDQNカップルが自業自得的に破滅していく「バタリアン・リターンズ」何百倍も感情移入出来るものであり、それゆえにヒロインのゾンビ化が進行し、絶望感が増してくる後半は見ていて本当に胸が痛む。その割にはヒロインの見た目が小奇麗なままであることに違和感を覚えるかもしれないが、実はその理由も終盤でちゃんと説明がある。低予算を逆手にとったそのアイディアには思わず感動してしまったが、それでも、ゾンビ集団による内臓引きずり出しなどのゴアシーンを手抜きせずにしっかりと描写している辺りに、このジャンルに対する友松直之の情熱を大いに感じた。

 ところが、世の中のゾンビ映画マニアに自信を持ってオススメ出来る作品かと言われたら、これが困ったことに素直に首を縦に振れないところがあり、その理由のひとつに本作の大胆過ぎるメタフィクション構造が挙げられる。前述したメインストーリーと平行して描かれるサブストーリーは、何と「恋愛死体」のシナリオを執筆中のとある映画監督の日常パート。自分の息子に「ヤらない後悔よりもヤる後悔だぞ」と無茶苦茶な教えを説いたり、「レイプゾンビ」という映画を撮りたいけどプロデューサーが女だから撮らせてもらえないなどとボヤいたり、「STACY」の加藤夏希に憧れて自分のスプラッター映画に出演したいと言っている風俗嬢とハメまくったりと、どう考えてもモデルは友松直之本人。何というナルシシズム!自分好きにもほどがある!実はこのパートこそがメインストーリーのクライマックスで待ち受けている物凄い展開への布石にもなっており、それはそれで友松直之の作家性を感じさせて「マジかー、友松監督もこんな頭良さそうな映画撮れるのかー」と感心してしまったりもしたのだが、素直にメインのストーリーだけで見せて欲しかったというのが本音である。まぁ、普通であれば無難に仕上げるであろう作品に捻りを利かせ、一癖も二癖もある映画にしてしまう辺りが友松直之の友松直之たる所以と言ってしまえばそれまでなんですが。

 

ゾンビ化したヒロインは手始めに義父を食い殺す

 

ダメだと分かっていても食べたくなっちゃう!悲しき性

 

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