女優霊

監督:中田秀夫

脚本:高橋洋

出演:柳ユーレイ、白島靖代、石橋けい
大杉漣、菊池孝典

ストーリー

 監督デビュー作の撮影中、ラッシュフィルムに一本の未現像フィルムが混じっていた。その中に謎の女が映っていたが、どうやらそのフィルムは昔、製作中止になった作品のものらしい。しかし、そのフィルムを見てしまった時から次々と撮影現場に奇怪な出来事が起こり始め、ついには死人まで出てしまう。果たして、謎の女は誰なのか?過去の女優のたたりなのか?映画の完成間近、次は何が…?

レビュー

 言わずと知れたジャパニーズホラーの傑作であるが、この映画がいかに怖くて素晴らしいかを語るにはまずジャパニーズホラーの原点ともいえる「邪願霊」というビデオ作品について触れなければならず、もっと言えばその「邪願霊」の構成と音楽を担当した小中千昭が鶴田法男と共に手掛けたビデオ作品「ほんとにあった怖い話」の中の「霊のうごめく家」がいかに怖くて素晴らしいかについても語らなければならないが、その話をするには「幽霊をいかに怖く演出するか」について提唱した小中理論の説明も必要不可欠になる上に、その小中理論を発展させた黒沢清はいかに偉大だったか、小中理論を逆手にとった清水崇の呪怨」はいかに革命的な作品だったかといった余計な話にまで脱線してしまいそうなので、その辺のクソ面倒臭い話はこの際なので全て割愛させていただく。

 映画の舞台は柳ユーレイ演じる新人監督のデビュー映画を撮影中のスタジオ。ラッシュフィルムの中に未現像の撮影フィルムが混ざっていたのを皮切りに様々な怪奇現象が起こるという作品であるが、本作の恐怖の根源とされる長い黒髪に白ワンピ姿の幽霊は狂ったようにバカ笑いするのみで、その正体も目的も結局最後まで分からない。その部分を「分からないからスッゲー不気味」と受け取るか「単なる投げっぱなし」と受け取るかで本作の評価は180度変わるといっても過言ではない。心霊写真さながらに写り込む絶妙な恐怖描写は今見ても秀逸だし、最後の最後でそれまで忠実に守ってきた小中理論をガン無視してハッキリと幽霊の全身像が現れる意外性溢れるクライマックスも最初見た時は大いに戦慄させられたものだが、現在無駄に量産されまくっている「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズや、TV局が真夏に放送している「恐怖映像特集」といった小中理論を理解していない人間が上辺だけを安易に模倣した単純なショック映像に見慣れてワーキャー言ってるような現代の若者が本作を見て怖がるかといえば答えはノーであろう。

 紛れ込んだ未現像のフィルムを幼少時代にTVで確かに見たが、一体それが何の映画だったのか思い出せないと語る主人公のエピソードは、本作の脚本を手掛けた高橋洋の実体験が元になっているというのは有名な話である。彼が子供の頃に見たのは、TVにドアが現れ、そのドアを白い霊体がゆっくりと通り抜ける。突然の女性の絶叫の後、「あなたは幽霊を信じますか?」というナレーションが流れて唐突に終わるという内容で、恐らくそれは日曜洋画劇場で放送した「シェラ・デ・コブレの幽霊」の番宣CMだったのではないかという説が濃厚であるが、未だ真相は分かっていない。この「意味の分からない映像を見てしまった恐怖」は、本作と同じく中田秀夫とコンビを組んで日本中を恐怖に陥れた「リング」の呪いのビデオや、自身の監督作であるJホラーシアター最終作「恐怖」の戦前の実験フィルムなどでも存分に活かされており、彼にとってこの体験がいかに強烈であったのかを大いに物語っている。

 

劇中で一番ショッキングなシーン。∩(・ω・)∩ばんじゃーい

  

正体も目的も分からないが、ただただ爆笑する幽霊

 

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